汚れっちまった悲しみに……

中原中也

『山羊の歌』より

汚れっちまった悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れっちまった悲しみに
今日も風さえ吹きすぎる

汚れっちまった悲しみは
たとえば狐の革裘(かわごろも)*1
汚れっちまった悲しみは
小雪のかかってちぢこまる

汚れっちまった悲しみは
なにのぞむなくねがうなく
汚れっちまった悲しみは
懈怠(けだい)*2のうちに死を(ゆめ)*3

汚れっちまった悲しみに
いたいたしくも怖気(おじけ)づき
汚れっちまった悲しみに
なすところもなく日は暮れる……

*1 革裘(かわごろも):皮衣。毛皮で作った防寒用の衣。
*2 懈怠(けだい):なまけ、おこたること。怠慢。「けたい」、または「げたい」とも読む。
*3 (ゆめ)む:[自上二]「夢見る」に同じ。

中原中也の詩